1925年の初秋、戦火を逃れるため、弘一法師は寧波の七塔寺に滞在していた。
ある日、弘一の親しい友人、夏丏尊が尋ねてきた。夏丏尊はいつも弘一法師のご飯のおかずが漬け物しかないのを見て、つい「その漬け物は塩からくないのですか?」と聞いた。
すると弘一法師は、「漬け物には漬け物の味がありますよ。」と答えた。
食事を済ませたあと、弘一法師は水をコップ一杯入れて飲んだ。
夏丏尊はこれを見て、「お茶の葉もないのですか?そんなあっさりしている水、よく飲めますね?」と聞いた。
弘一法師は、「水はあっさりしているが、水なりの味がありますよ。」と笑って答えた。
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