唐の竜潭禅師は幼く、まだ出家していない時、両親がたいへん貧乏であった。餅(ビン、中国式のパン)を売ることで生計を立てていたが、住む家はなかった。これを見かねた道悟禅師は寺の隣の小屋を貸し与えて、竜潭たちを住まわせることにした。
竜潭はこれに対して感謝の気持ちを表すために、毎日餅を十個ずつ道悟禅師に差し上げた。また、道悟禅師は毎日この餅の一個を龍潭に返して、「これを君に返す。子孫の繁盛を祈る。」と言った。
竜潭はどうしてもこのことが理解できなかった。そこで、ある日、道悟禅師にその故を尋ねてみた。しかし、道悟禅師は「君にもらったものを君に返すのに何か不思議なことがあるのかい?」と聞き返した。
龍潭はそれを聞いて、突如悟って出家し、後に研鑽を積み「宗師」になったのであった。
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