禅宗物語
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他人に取って代わることはできない

 道謙禅師が親友の宗園と行脚していた途中、宗園が疲れに耐えきれず、何度も「帰ろう、帰ろう」と言って騒いだ。

道謙は「私達は大いなる決意をもって仏道の修行に来ている。しかも、遠くここまで歩いてきた。中途半端で戻るなんて、残念だと思わないか?よし、これから私にできることがあれば、何でも代わってしてあげる。ただ、次の五つのことだけは代わるできない!」と宗園を慰めて言った。

宗園は「五つのことって、なに?」と聞いた。

道謙は「服を着ること、ご飯を食うこと、ウンコをすること、おしっこをすること、歩くことだ」と淡々と言った。

宗園は道謙の話を聞いて即座に悟った。その後、「帰ろう」とは二度と言わなくなった。

「黄金は潮に流されてきたものであっても、それを手に入れようとすれば自ら朝早く起きて掬い取らなければならない!」ということわざがある。世の中には「濡れ手で粟」のようなことはない。高層ビルはどんなに高くても、下の地面から立っているものだ。道はどんなに長くても、第一歩から始まるのだ。生死や煩悩は他人に取って代わることができない。一切が自分に頼るしかないのだ。

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