禅宗物語
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耳を切って雉(きじ)を救う

智舜禅師(ちしゅんぜんじ)は唐の人で、ずっとあちこち行脚し、参禅していました。

ある日、智舜禅師は山中で座禅をしていました。ある猟師は一羽の雉を手に入れました。怪我をした雉は禅師のところに逃げてきました。そして、禅師は袖でこの虎口を脱した小さな命を守ってあげました。まもなく、猟師が禅師のところへ来て、「おれが打った雉を返してくれ。」と怒鳴りました。

「一つの命ですから大切です。なにとぞ見逃してくださいませんか。」と、禅師は無限の慈悲を以って猟師を教えました。

しかし、猟師は「冗談じゃない。返してくれ。あの雉はぼくのおつまみだよ」と禅師に付きまとって雉をほしがりました。禅師はどうしようもないので、身につけた戒刀を手に、自分の耳を切って猟師に渡しました。そして、「この二つの耳はどうですか。どうぞ、お受けとりになっておつまみにしてください。」と語りました。

猟師はびっくりして、狩がどんなに残忍なことかよく分かり、ひどく後悔したということです。

 

 

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