禅宗物語
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自傘自度

 ある信者が軒下で雨宿りをしているところに、禅師が傘をさして通りかかりました。すると、「禅師様、人を救ってください、私を助けてください。わたしを連れていっていただけませんか」と呼びかけました。

 「私は雨の中を歩いていますが、あなたは軒の下にいます。軒の下にいるから濡れないので、助けてあげる必要はないと思います。」

すると、信者は軒から出て、雨の中に入って、「今度は私も雨の中です。助けてくださいませんか。」と信者は雨の中に立って聞きました。

 「私達が雨の中にいるのは事実ですが、ぼくは傘を持っているから、濡れないが、あなたは傘を持っていないので濡れるのです。ですから、あなたを助けられるのは私でなく、傘です。私より傘に頼むほうがいいと思いますよ。」と禅師は答えて、行ってしまいました。

 傘を持っていれば、雨に濡れません。仏性があれば、魔に迷いません。分の傘で分を救うと同じように,自分で分を救います。すべてのことは自分に求めるべきです。禅師が傘を貸さなかったのは、まさに禅師の大慈悲だったのです。

 

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