仙崖(せんがい)禅師は街角で説法している時、ある夫婦が激しく口喧嘩しているのに出会いました。
妻は「あなたは夫と言えるの?ちっとも男らしくないねえ。」と言い、夫は「罵るな。これ以上罵ったら、殴るぞ!」と言っていました。すると、妻はまた「あなたを罵って何が悪い。男らしくないじゃん!」と口答えをしました。
この口喧嘩を聞いていた仙崖(せんがい)禅師は通りかかった人々に大声で呼びかけました、「皆さん、ほら、早く見てごらん。闘牛には入場券が要る。コオロギの賭博、闘鶏にもチケットが要る。今、人の戦いにはチケットが要らない。早く見てごらん!」と。
夫婦二人は相変わらず口喧嘩を続けています。夫は「また俺が男らしくねえと言ったら、殺すぞ!」と言い、妻は「殺してみれば!あなた、全然男らしくないと言っているのよ!」と返事をしました。
仙崖(せんがい)禅師も「すばらしいね!今人殺しが始まるよ。早く見に来てごらん!」と叫びました。人々は「坊主、大声で叫ぶな。お前はこの夫婦喧嘩には関係ないだろう。」と大声で禅師を叱責しました。禅師は、「わしと関係ないわけじゃないよ。人を殺すと聞かなかったか。人を殺したら、お坊さんにお経を読んでもらうよう頼むようになるんだ。そうすれば、わしは祝儀がもらえる。」と答えました。
「とんでもない坊さんだ、祝儀のために人殺すことを望んでいるとは!」と皆は仙崖禅師を責めました。仙崖禅師は「皆が人殺しを望まなくなりゃ、わしは今から説法をするよ。」と言いました。
この時、口喧嘩まっ最中の夫婦も喧嘩を止め、禅師と人々とが争っているのを聞きに、禅師をとり囲みました。
仙崖禅師は口喧嘩の夫婦に次のように説法をしました、「どんなに厚い氷でも、太陽の光を浴びると溶ける。どんなに冷めい料理でも、薪を燃やしてあたためたら熱くなる。夫婦は縁で一緒になったのだから、太陽のように他人を温め、薪のように他人を成長させるべきだ。賢明な夫婦は互いに敬愛するよう望むものだ。」と言いました。
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