禅宗物語
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一心不生

三祖の僧璨大師は法を得た後、二祖の言いつけに従って、皖公山に隠居していた。周の武帝の時、仏難が起こったので、僧璨はやむなく太湖県の司空山に移り住んだ。辺鄙なところだったので、十年経っても、だれにも知られなかった。

隋の開皇十二年、道信というわずか十四歳の沙弥がある日、僧璨に解脱の法門を求めにきた。僧璨は「誰があなたを縛ったのか?」と聞いた。

道信は「誰も縛ってはいません」と考えずに答えた。

僧璨は「それなら、どうして解脱の法門を求めるのか?」

道信はそれを聞いて、直ちに悟った。その後,この三祖に従い、侍者になった。九年も苦労をして、衣鉢を継いだ。僧璨が彼に唱えた伝法偈(でんぽうげ)は次のようなものである。

「花を地に播く、地から花が生じる。

しかし、種を播く人がいなければ、地から花は生じない。」

一心不生である。花もない。土地もない。これが禅である。

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