一休さんは一人で何日も独座し、参禅していました。お師匠様はその様子の奥にある意味が分かり、ニコニコしながら一休さんを連れて山門を出ました。
寺院の外は空気もきれいですし、緑の草の芽も出ています。鳥が空を飛び回っており、小川もさらさらと流れています。一休さんは深く息を吸いこみながら、お師匠様を眺めました。お師匠様は淡々と坂道で座禅をしています。「老師のおっしゃる意味は一体どういうことだろうか。」と一休さんはちょっと困惑していました。
夕方になって、お師匠は立ち上がりましたが、何も言わずにただジェスチャーだけで一休さんを呼び、寺に戻ってきました。お師匠様は寺に着いて、境内に入ると、すぐドアを閉じて、そのまま一休さんを外に出したままにしました。
お師匠様の意図が分からないので、一休さんは外で座って、理解しようとしていました。まもなく日暮れになって、霧に囲まれた周りの丘、森、小川のせせらぎ、鳥の鳴き声や水の音もはっきり区別できなくなりました。
その時、お師匠様は境内で大きい声で一休さんを呼んでいました。そうして、、一休さんは寺内に入りました。
「外はどうだった?」
「すっかり暗くなりました。」
「そのほかに何かあるか?」
「何もありません。」
「いいえ、風、野原、花草、小川など……万物があるよ。」とお師匠様は答えました。
一休はとっさにお師匠の苦心を悟りました。
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