ある日、神賛は一人の老坊主が窓の下でお経を読んでいるのを見かけた。ちょうどその時、一匹の蜜蜂が窓の紙にぶつかりながら、外に飛んでいこうとしていた。
すると、神賛は「世界は広いのに、外に出られない。こんな古紙に突っ込んでいて、いつ出られるものか」とぶつぶつ言った。
老坊主はそれを聞いてびっくりして、すぐ手元のお経を下に置いて、「お前は外に行脚をして、だれか優れた方に出会ったのか」と聞いた。そしてまた「お前が戻ってきてみると、様子が前とは全然違っている。一体どういうことがあったのかな?」とも尋ねた。
神賛は自分が百丈禅師に出会った経緯を話し、最後に「禅師のおかげで、悟りました。」と答えた。
老坊主はそれを聞き、寺にいた僧侶全員を集め、神賛に法堂で説法をしてもらった。すると、神賛は法座に上り払子を持って遠方を見つめながら、「蜂投窓偈(蜂投窓の偈<げ>)」を語った。
「空門を出られない。いくら投窓しても愚かだ。百年もの古紙に突っ込んで、いつ出られるものか」と言った。
この偈は禅の融通性に富んだ知恵と機敏さとを明示している。ある人たちは長い時間、一所懸命古い紙の山に没頭して出て来ないので、結局、自分で自分を埋没させてしまうことになるのである。
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