禅宗物語
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椎茸を干す


永平寺に八十歳になる猫背の老禅師がいた。ある日、強い日差しの下で椎茸を干していた。大和尚の道元禅師がそれを見て、声をかけた「長老、もうこんな高齢なのに、どうしてこんなに苦労をするのかい。そんなに苦労しなくていい。一つ代わりの人を探してあげようと。

老禅師すぐに「他人はわしではないから」と答えた。

「それはそうだが、しかしこんな日差しの強い時に仕事をする必要はないでしょう」と道元禅師は言った。

すると、老禅師は、「日差しの強い時に干さなければ。曇りの日や雨の日などに干す訳にはいかないと。

道元禅師は寺主として数多くの人を指導してきたが、この老禅師の言葉には窮してしまった。

禅者の生活は何事にせよ、他人の力を借りず、また明日に延ばさずその日にやる。「他人は自分ではない」、「今しないと、いつするのか」と思慮する、これは現代人にとっても深く考えるべき問題ではなかろうか。

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