禅宗物語
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まだ、重いか?

  韓国の鏡虚禅師(キョンホソンサ)は出家したばかりの一人の弟子を連れて雲水行脚(うんすいあんぎゃ<僧が修行のため、ほうぼうを巡って歩くこと>)をしていました。道中、弟子が小声で「ちょっと荷物が重すぎるな?」とぶつぶつ言いながら、何回も禅師に向かって、「どこかで休みましょう」とお願いしました。しかし、禅師は何も言わず、相変わらず元気そうに前へ向かって歩いて行きました。

ある日、二人がある村を通りかかったところ、たまたまある婦人が一軒の家の中から跳び出してきました。前を歩いている禅師はとたんにその婦人の両手を固く握ってしまいました。何を思ったのか、その婦人はびっくりして大声で叫び騒ぎました。その叫び声を聞いて、婦人の家族や隣人たちが家から飛び出してきて、禅師が婦人に痴漢行為をしていると思って、声をそろえて「男を殴れ!殴れ!」と叫びました。そこで、体が大きかった鏡虚禅師(キョンホソンサ)でしたが、うしろ見もせずに一目散に逃げました。弟子も重い荷物を担ぎながら、禅師の後ろについて飛ぶように走っていました。

かなり走って、何本かの山道を通ると、村人はもう二人を追いかけて来なくなりました。ある静かな山道で、禅師は止まって、その弟子に聞きました、「まだ、重いか?」と。

弟子は、「お師匠様、不思議なことでございます。いま走って来た時、荷物は少しも重く感じませんでした。」と答えたということです。

 


 

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