禅宗物語
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平常心を留めよ

  ある学僧が法堂に行って禅師に「禅師、僕はずっと気をこらして座禅をし、お経を唱えています。弟子たちの間で、僕が一番努力しているという自信を持っています。しかし、なぜなかなか悟れないのでしょうか。」と聞きました。

禅師は一つの瓢箪(ひょうたん)と一つかみの粗塩(あらじお)を手に持って学僧に渡しながら、「瓢箪に水を注いで粗塩をいれ、粗塩が溶けた時、君は悟るだろう」と語りました。

学僧は禅師のいうとおりにしましたが、まもなく禅師のところへ戻ってきて、「瓢箪の口が小さすぎます。粗塩を中に入れても、溶けないのですが、箸で混ぜることもできません。ですから僕は依然として悟れません」と言いました。

 禅師は瓢箪の中から水を少し出し、数回振っただけで粗塩が溶けてしまいました。「朝から晩まで平常心を留めずに努力するのは水がいっぱいになる瓢箪のようです。振ることもできなく混ぜることもできません。それではどうやって悟るのでしょうか。」と優しく学僧に語りました。

「まさか、努力しないで悟れるのではないでしょうね。」と学僧は聞きました。

「修行は弦を弾くことと同じで、弦がきつ過ぎると切れてしまい、ゆるすぎると音が出ません。中道の平常心こそ悟りの元です。」

これを聞いて、学僧はようやく悟ったそうです。

 


 

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