禅宗物語
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 一と二

 

中国仏教史上、道教の道士と仏教の僧侶たちは時々弁論しあったり、論争しあったりしてきました。

昔、ある道士は「仏教はどうしても、われわれの道教とは比べものにならない。仏教の最高価値は『一』だ。『一心』、『一乗』、また『一真法界』、『一佛一如来』だ。つまり全部は『一』だと言われている。しかし、道教のほうは全部『二』だ。たとえば、『乾坤』『陰陽』などはみんな『二』だよ。だから、仏教の『一』は道教の『二』に劣るよ。」と法印禅師(ほういんぜんじ)に言いました。

それを聞いて、法印禅師は納得がいかなそうに、「そうか。道教の『二』は本当に『一』より強いか?」と聞きました。

「あなたが『一』と言ったら、ぼくは『二』で勝つぞ。」と道士は言いはりました。

すると、法印禅師は片足を挙げながら、「今僕は片足を挙げたが、あなたは両足を同時に挙げられるか?」とゆっくりと聞き返しました。

道士はそれを聞いて言葉も出なくなりました。

 


 

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