禅宗物語
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天国と地獄

ある武士が白隠禅師(はくいんぜんじ)に聞きました。「天国と地獄の区別は何ですか。」と。

白隠禅師は武士に「お前は誰だ。」と問い返しました。 

武士は「武士です。」と答えました。 

白隠禅師はそれを聞いて「お前みたいな乱暴な者が、私に聞く資格を持つか」とからかいました。

武士は腹をたて、身に付けた剣を取り出し、「てめえ、殺すぞ」と白隠を殺そうとしました。 

剣が白隠禅師の頭上に落ちようとした途端に、白隠禅師は平然として、低い声で「それが地獄だ」と言いました。 

武士は驚き、何か悟ったかのようにすぐ剣を捨て、合掌しながら、「ご指導をありがとうございます。先の軽率な行為を、どうか許してください」と頭を地面につけてお辞儀をしたそうです。

白隠禅師は「それが天国だ」とニコニコしながら言ったのでした。


 

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