唐代の竜譚崇信禅師(りゅうたんそうしんぜんじ)は天皇道悟禅師(てんのうどうごぜんじ)に従って出家しました。数年間、薪を取り、ご飯を作り、水を担ぎ、粥を作っていましたが、道悟禅師から何の法も教えてもらいませんでした。
ある日、崇信禅師(そうしんぜんじ)は師匠に「先生、弟子は先生に従って出家して以来、すでに何年間もたちましたが、先生の開示を得たことが一度もありません。どうかお慈悲を垂れ、修道の法要を教えてくださるようお願いします。」と言いました。
その話を聞いて、道悟禅師はすぐ、「今の話は、私には身に覚えがない。考えてみてご覧、君がわしに従い、出家して以来、毎日修道の心得を教えているではありませんか。」と答えました。
「よくわかりません。教えていただいたのは一体何でしょうか。」と崇信禅師が不思議に思って聞きました。
「お茶を持ってくれば、飲んであげます。ご飯を捧げ盛ってくれば、食べてあげます。わしに合掌すれば、君にうなずき、礼を返します。一日も怠けることなく心得を教えているではありませんか。」と語りました。崇信禅師はそれを聞いた後、その場でさっと悟りました。
暮らしこそ禅であることが、この師弟二人の問答からうかがえます。日常生活の薪や水の運び、茶飯には無限の禅の心が満ちているのです。
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