華厳殿(けごんでん)は法堂の後ろに位置しており、「華厳三聖」(けごんさんせい)をまつる場所です。法堂より階段で150段ほど高く、霊隠寺で一番高い建物です。最も後ろの五境内(けいだい)にあります。上から鳥瞰(ちょうかん)すると、華厳殿は法堂(ほうどう)、天王殿(てんのうでん)、大雄宝殿(だいおうほうでん)、薬師殿(やくしでん)と一本の中軸線上に並んでおり、人々に法界無尽(仏の教えは無限である)という「華厳」の宇宙観を感じさせます。
殿内には壮大な仏像が三体あります。中央に毘盧(びる)の印を結んでいるのが毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)で、左に蓮の花を持っているのが大智文殊師利菩薩(だいちもんじゅしりぼさつ)で、右に如意(鉄、木、竹などで作った仏具)を握っているのが大行普賢菩薩(だいぎょうふげんぼさつ)です。どの仏像も高さ13メートルで、大きなミャンマー産の楠木(くすのき)の彫刻です。仏像は精緻で美しく、流れるような線も優美です。金色は楠木の原色と調和するために、金箔(きんぱく)で細かい線を描いて、仏像を一層厳かにしています。毘盧遮那仏、文殊菩薩、普賢菩薩は華厳世界の聖人で、「華厳三聖(けごんさんせい)」ともよばれます。
毘盧遮那(びるしゃな)は仏の法身で「遍一切処(へんいっさいしょ)」を意味します。つまり、仏の悩みを完全に払拭させ、あらゆる美徳を備えています。その体は国土ほど大きく、普(あまねく)く一切処に存在し、真実で無限の功徳があり、一切法が平等性であるため、「法身仏」とも呼ばれます。旧訳の「華厳経」により、毘盧遮那(びるしゃな)は無量劫(むりょうごう)に功徳を修行し、正覚(しょうがく)を成し、蓮華蔵(れんげぞう)世界に住し、光明があまねく十方世界を照らし、身の諸の毛孔から無辺契経海がほとばしり出ます。毘盧遮那(びるしゃな)仏の左で蓮を手に持っているのが文殊師利菩薩です。文殊師利はまた「文殊」とも呼ばれ、「妙吉祥」(みょうきちじょう)を意味します。諸菩薩の中で文殊菩薩より知恵のあるものはないと言われます。したがって、文殊菩薩は古仏の化身として十方諸仏を助けて人間を教化します。山西省の五台山(ごだいさん)は文殊菩薩が示現応化(じげんおうげ)する道場です。五台山毘盧遮那(びるしゃな)仏の右にいるのは大行普賢菩薩です。普賢菩薩はまた「遍吉」(へんきち)とも呼ばれ、いたるところで善行を行うという意味が含まれています。普賢菩薩はかつて無量劫(むりょうごう)において菩薩行を施し、一切智を求め、人間を済度(さいど<苦しむ衆生を救う>)するために無限の行愿を収集して、十大行愿を持ち、衆生を教化します。大乗仏教の信者たちにとって普賢菩薩は菩薩道を実践するための手本です。中国四川省の峨眉山(がびさん)は普賢菩薩が示現応化(じげんおうげ)する道場です。
華厳殿は西暦2002年に建てられ、門の壁に、もと国家人大委員常務委員長の喬石さん直筆の「華厳殿」という額が掛かっています。
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