霊隠寺天王殿(てんのうでん)は仏教寺院内の第一境内の中の殿堂です。天王殿は北に位置しており、南は飛来峰に面しています。殿内には弥勒菩薩(みろくぼさつ)、両側にはそれぞれ四天王の彫像、裏側には韋駄天(いだてん)が祀(まつ)られています。
まん中の神棚に供養してある弥勒菩薩は、胸を露(あらわ)にニコニコしながら、蒲団に正座しています。裏側の神棚に供養してあるのは、仏教の護法である韋駄天です。楠(クスノキ)で作られ、高さ約2.5メートルあります。威厳があり、はつらつとしています。この彫像は南宋時代から伝わったもので、今ではすでに八百年あまりの歴史があります。
両側は四天王です。高さ8メートルで、それぞれ鎧(よろい)を着ています。俗称は四大金剛です。そのうち、二人は威厳のある様子をしており、他の二人は温和でやさしく見えます。東方天王は提多羅吒(だいたらた)という名で、中国語訳の持国(じこく)の通り、国土を守り、帝释天(たいしゃくてん)の主楽神です。彫像は白色で、琵琶を手に持ちながら、諸(もろもろ)の神将(神のように優れた将軍たち)を率いて東勝神洲(とうしょうしんしゅう)の人々を守っています。南方天王は毘嚧陀迦(びるだか)という名で、中国語訳の増長(ぞうちょう)の通り、人々に善根(ぜんこん<善を行おうとする心根>)を増長させることを司(つかさど)ります。彫像は青色で、剣を手に持ち、諸(もろもろ)の神将を率いて南瞻部洲(なんせんぶしゅう)の人々を見守っています。西方天王は毘留博叉(びるはくしゃ)という名で、中国語訳の広目(こうもく)の通り、淨眼(じょうがん<きれいですんだ目>)を以って護持することを司ります。彫像は赤色で、手の中に竜が巻きついており、諸竜を率いて西牛貨洲(さいごけしゅう)の人々を見守っています。北方天王は毘沙門(びしゃもん)という名で、中国語訳の多聞(たもん)の通り、大きな福德(ふくとく<幸福な運命と徳の行い>)があり、人々の財産を護持することを司ります。彫像は緑色で、右手と左手にそれぞれ傘や銀の鼠を持って北俱蘆洲(ほっくるしゅう)の人々を守護しています。
霊隠寺天王殿の門の上に二つの額(がく)が掛かっています。その一つは近代の著名な仏僧で書家でもある黄元秀(こうげんしゅう)によって書かれた「霊鹫飛来」という額です。もう一つの額、「雲林禅寺」は清の康熙帝(こうきてい)の直筆(じきひつ)のものです。
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