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霊隠寺のバドミントン

  杭州にある霊隠寺は静かな環境の中に、長い歴史と、大きな規模を誇る寺院である。建ち並ぶ仏堂の前は、いつも参拝客で賑わっており、お参りする人たちで数えきれない。霊隠寺へお参りに来るお客様はほとんど一見して敬虔で真剣な方たちだが、その中にバドミントンのラケットを背負う人の姿が時々見られる。

実は、霊隠寺には整備されたバドミントンのコートが一カ所ある。バドミントンをしに来る人たちは、よく寺内でお坊さんたちといっしょにバトミントンを練習し、技術を練磨し合っている。

コートのゆかリ:

  霊隠寺のバドミントンのコートは何となく「曲径通幽处(小路が深い森の奥まで伸びている、そこは静寂で幽遠な所だ」とでもいった感じがする。コートは境内の2つの五百羅漢堂の間に位置していて、一般観光客には開放されていない。  

  五、六年前、霊隠寺内でバドミントンの好きなお坊さんが何人か練習用の空き地を探していた。ちょうど五百羅漢堂の間に空き地が見つかり、その広さも幅もバドミントンのコート一面にぴったり合った。最初、霊隠寺のバドミントンのコートは板で敷かれていたが、露天のため、長い歳月を経て、風雨に曝された結果、板もついに腐ってしまった。その後、何度も修繕され、最後に今のように改善されたのである。壁はなお寺としての特有の黄色を保つ以外は普通のコートとあまり変わりがない。

  「霊隠寺のバドミントンのコートはナショナルチームのものを基準にして作られたのだ。いや、国レベルよりずっと優れている」とよく言われる。この話を聴いて、霊隠寺副監院の衍空法師はにっこりして、「ナショナルチームのものとどうかは、知りませんが、少なくとも杭州市内においては、このコートが素晴らしいものだとは言えるでしょうね。これを作るために、寺院もいろいろと工夫したものです」と述懐する。

ハイレベルの監督:

  2010年5月1日、杭州市霊隠寺のバトミントンのチームが正式に成立した。それまで、霊隠寺内に10人あまりのお坊さんたちが勤行の後、体を鍛えるためにずっとバトミントンの練習を続けていた。毎週の火曜日と木曜日の夜に、少なくとも2時間ぐらい練習する。

  レベルアップのために、霊隠寺はわざわざ当時バトミントンの有名な人を監督として招いている。その中に、  韓国の現職のナショナルチームの男子シングルス監督である陳剛氏もいる。中国バトミントンクラブ・スーパーリーグが行われている間に、浙江省チームのメンバーが度々霊隠寺へやってきて、お坊さんたちと一緒に練習をし、技術を研磨し合っていた。

  どうやってラケットを持つのかから初めて、どのように走ったらいいのか、また試合中にどのような戦略を取るべきかなど、お坊さんたちは非常に真面目にバトミントンの研鑽をしていた。暇な時、お坊さんたちは杭州市陳経綸体育学校にも通い、そこのクラブのメンバーたちと一緒に訓練を受け、プロのコーチからも指導を受けた。陳経綸体育学校のバトミントンの監督、杭州バトミントン協会事務長李向さんも、霊隠寺のバトミントンのチームの監督を引き受けたことがある。彼は霊隠寺のお坊さんたちを、「皆いつも真面目に練習して、進歩もすごく速い」といつも褒めていた。

一般世界とオープンに交流を行う:

  寺院は神聖かつ厳かな所であるが、なぜバトミントンのコートがあるのか?そういう質問について、衍空法師は笑って答える:「仏典の神聖さを人々の生活と融け合わせようと考えているからです。寺院に来て、ただ仏像に礼拝するだけではなく、仏典の中にあるもっと深い知恵も理解すべきです。それによって、生活をもっと豊かにします。これがバトミントンのチームを作り、バトミントンの練習を続ける最も重要な理由です。我々はバトミントンを媒介として、外と結びつきます。バトミントンを愛する多くの人に仏典を理解してもらい、運動の後、仏典の世界で自分の心の世界をだんだん豊かにするのです」と。

  今、霊隠寺へバトミントンをしに来る人は、殆ど監督から紹介を受けてやってきた人である。その数も益々多くなって来ている。霊隠寺のバトミントンのチームのメンバーたちも多くの人が霊隠寺へバトミントンをしに来るのを歓迎している。「もしそとのバトミントンの愛好者たちが霊隠寺へバトミントンをしに来たいなら、前もって私たちに連絡してください。時間があれば、私たちは喜んで皆さんと一緒に交流したいのです」と衍空法師は言っている。

  交流を望んでいる霊隠寺のお坊さんたちの姿は、かつて何度も競技場で見られた。2011年、バトミントンクラブ・スーパーリーグが行われている時、浙江省のチームが杭州の試合に参加した。その時、霊隠寺のバトミントンチームのメンバーは毎日、必ず競技場に行った。杭州で行われた他のアマチュアの試合の中でもしばしば彼らの姿が見られた。「将来、我々のチームがさらに練習して、もっといい基礎を築いたら、必ずこのアマチュアの試合に出ます。皆さんとお互いに交流し、その過程で自分自身を絶えず高めたいのです」と衍空法師も語る。

  バトミントンを通して、厳かな寺院はもう厳かだけのところではなくなり、その代わりに親しい近づきやすい場所になりつつある。また、寺院のお坊さんたちも健康な体を持つようになった。小さなバトミントンがこういうふうに霊隠寺の僧侶と民衆、神聖と世俗を結びつける深妙な絆となっている。全く違う二つの世界に生きる人々の貴重な交流の媒介になっている。

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