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対聯美談

  霊隠寺前の冷泉亭(りょうせんてい)には、明代の大書画家である董其昌(とうきしょう)の対聯(たいれん)があります。それには:

    「泉自几时冷起、峰从何处飞来」(泉はいつから冷たくなったのか、峰はどこから飛んで来たのか)とあります。

どの句にも問いがあり、また趣にも富んでいます。伝説によると、左季高(さきこう)が試しに対聯を作ったそうです。それには:

「在山本清、泉自源头冷起:入世皆幻、峰从天外飞来」(山にいればもとから清らかで、泉はそのみなもとから冷たいのです。世の中にいれば何もみな幻のようで、山は天の外から飛んできたのです)と。

また、廉訪使(れんほうし<清廉かどうかを調べる勅使>)である金眉生(きんびせい)にも答聯(とうれん)があります。それには:

「泉水淡无心、冷暖惟主人翁自觉:峰峦春未了、去来非佛弟子能言」(泉の水は清くて何の意味もない、冷たい・温かいというのはその人の感じにすぎない、連なる山々の春はまだ終わっていない、この季節の変化については仏の弟子以外の者にはよく言えないものですよ)と。

清後期の学者である兪曲園(ゆきょくえん)、つまり兪樾(ゆえつ)も「为山灵作答亦妙」(山霊の為に答えの対聯をつくるのもまたおもしろく楽しいことだ)と言っています。以下の対聯の話も広く知られた西湖の美談の一つです。

ある日、兪曲園(ゆきょくえん)は夫人と共に霊隠を遊覧し、一休みをしている時、董其昌(とうきしょう)の書いた対聯を見ていました。そして、夫人は面白く思い、夫の兪曲園に答聯(とうれん)を作るようにすすめました。すると、兪曲園は「泉自有时冷起:峰从无处飞来」(泉はいつからともなく冷たくなり、峰はどこからともなく飛んで来た)と作リました。夫人は「泉自冷时冷起:峰从飞处飞来」(泉は冷たい時から冷たくなった、峰はどこからともなく飛んで来た)のほうがいいと言って、二人は大声で笑い出したということです。

数日後、これを聞いた兪曲園の次女も答聯を作ってみました。

「泉自禹时冷起;峰从项处飞来」(泉は禹の時代から冷たくなった、峰は山の高いいただきから飛んで来た」と。

これを見た兪曲園はびっくりして、「大昔の禹(う)の時代、洪水が禹の治水事業によって治まった。だから上聯は通じるが、下聯は何を意味するのか」と聞きました。すると、次女は「項羽(こうう)がこの山を抜き取らなければ、飛んで来ることもないでしょう」と答えました。項羽が垓下(がいか)で唱えた「力拔山兮气盖世」(私の力は山を抜くように強く、気は世を覆うように壮大だ)」の詩句を借りたもので、これもまた絶妙な一句と言えましょう。

 

 

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