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大悲法師が仏歯舎利の東南アジアでの巡回展覧の護送の任にあたる

1955年、周恩来総理を団長とした中国政府の代表団が、インドネシアで開かれたバンドン会議に出席した。会議の中で我が国の平和五原則を基礎にした外交活動の準則が提起された。周恩来総理を中核にした中国代表団の卓越した活動を通じて、新中国の声望が大いに湧き上がった。会議に出席している間に、東南アジア諸国の政府の首脳が相次いで中国側に要望を提出した。その内容は彼らの国家の人民が中国に保存され仏陀の歯をどうしても拝謁したいということであった。特に、仏教を国教とした国、例えばミャンマー、タイ、カンボジア、スリランカ、ネパール、ブータンなど解放前に既に国民党政府に同じような要求を出していたが、全部断られた。

仏歯舎利(ぶっししゃり)は釈迦牟尼の歯である。釈迦牟尼が火葬後、全身が粒状の舎利になったが、その歯だけが無傷に残されたと言われる。ただし、今この世に残されているのはたった二粒だけである。1師子国(現在のスリランカ)に、もう1粒は烏国(現在のインド北方のスバッター川流域)にある。その後、烏国から中国新疆(しんきょう)の于闐(現在の和田)に伝わってきた5世紀のころ、東晋の僧侶仏顕が西へ行脚に出かけた時、于闐に至って、この1の仏歯を都の建康(今の南京、江蘇省の省都)に持ってきた。隋(ずい)が全国を統一した後、この1の仏歯がまた長安(現在の西安)に持ってこられた。五代(紀元907-960年、唐滅亡後、中原に興亡した後梁後唐後晋後漢後周の5朝)のころ、中原地域は戦乱であった。そして、仏歯は転々と北方の遼国の燕京(現在の北京)まで流れた。遼国の道宗咸雍七年(西暦1071年)、仏歯霊光寺の招仙塔に安置された。そこは1900年に八国連合軍により破壊された。片付け僧侶が、招仙塔の敷地で秘蔵された仏歯の石函を発見した。その中に沈香(じんこう)木箱があり、上には「釈迦牟尼佛灵牙舍利(釈迦牟尼の仏歯舎利)」記してある。それは北漢の天会七年(西暦963年)に秘蔵されたであるその後、中国に秘蔵されたこの1粒の仏歯はずっと全世界中の仏教を信仰する国に慕われている。そして信徒たちにとって、仏歯を拝謁することは人生における一つの大きな宿願であった。

東南アジアの信者たちの気持ち、また新中国がまだ誕生したばかりで、国の外交需要を考えて、周恩来総理これらの国の要求に応じた。中国側から相関する人を派遣し、これらの国まで仏歯を護送して、信者たちから拝謁を受けることに同意した。帰国した後、周総理宗教面においても、外交面においても非常に特別な外事活動できるだけ早めに丹精こめて手配するようと関係部門に命令した。政務院宗教事務局中国仏教協会と共に、今回の任務を引き受けた。彼ら第一に考えたのは、仏歯を護送し、中国仏教代表団の職務を担当できる候補者のことである。候補者として先ず仏教学を研究したことあり、それに仏教儀礼に詳し、体が健やかで、しかも名山大寺で住職を務められる人である。こういったことから、霊隠寺の大悲法師が選ばれ、代表団の副団長として仏歯の護送及び巡回展覧の具体的な事項の処理を担当することになった。これは新中国が誕生した後、初めて外国を訪問する大規模宗教代表団であった。護送された仏歯は各国の信者の心の中とても神聖な地位を占めている。1955年9月、吴登貌、吴干吾がそれぞれ副団長となったミャンマーの仏教代表団の一行12名は、わざわざ中国へ仏歯を出迎えに来た。10月、周恩来総理がこの代表団をもてなす為に歓迎レセプションを催した。その後、護送団が仏歯を持ってミャンマーに向かった。中国に保存された仏歯が東南アジアで巡回展覧されことは、東南アジア諸国にとって確かに一大センセーションを巻き起こす重大な出来事であ。代表団の至る所、庶民から国家元首まで、皆誠を尽くして歓迎した。常に町中総出で貴賓を出迎え、鼓の音と音楽の音が一斉に鳴り、皆ひれ伏して崇め、その空前の盛況が人々驚かせた。大悲法師の一行がミャンマーを訪れ時、飛行機がまだ空を旋回しているというのに、ミャンマー首都ヤンゴンの数十万の市民は既に道の両側でひざまずいて、彼等を恭しく待っていた。ミャンマー大統領や首相、裁判官及び文官と武官は既に空港で待っていた。仏歯が着いたら、皆すぐ五体投地の礼をした。後、ミャンマー政府がわざわざ一つの専門機構を設立し、具体的な参詣活動を担当した。また、ヤンゴンの或る所仏歯を参詣する専門場所を設立して、市民が秩序よく拝謁できる場所を提供した。一方、大悲法師の一行は順番に仏歯塔の周り守っていた。拝謁する期間、ミャンマーの信者たちは真珠や宝石や金銀などの貴重品を大量に仏歯塔へ布施をて、これによって、釈迦に対する敬虔な崇拝を表した。ミャンマー政府は大悲法師一行を国賓として招いた。しかも僧王と中国仏教代表団との面会も手配した。

今回の仏歯を護送し、東南アジアで巡回展覧するという宗教と外交活動を通して、中国国民と東南アジア諸国の人民との相互理解を推進した。新中国に対する東南アジア諸国からの信頼も得た。また各国の間における友好的な交流と協力をも促した。代表団が北京に戻った後、国家主席劉少奇と周恩来総理が自ら空港まで出迎えに行き、代表団のメンバーたちと握手し、大悲法師の一行が無事円満に任務を完成したことに対し熱烈な祝賀の意を表した。そして、代表団の訪問活動が円満に成功したことに高評価した。

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